産業競争力の源泉となる技術力をいかに活用するか-。その基礎となるのが技術を権利の形に変えた特許やノウハウなどを活用する知財戦略だ。特許庁は、中小企業の経営も見据えた知財戦略支援に力を注ぐ中で、金融機関を通じた企業支援を模索している。そこには、経営支援、知財支援プラス金融支援が連動したスキーム作りへの意図がうかがえる。だが過去20年、知財と金融の結びつきによる支援の試みは多くあったものの成果はいま一つ。その理由を考える。
1990年代中盤、知財担保融資を開発し、実行した政府系金融機関の担当者は「知財担保融資は非常に難しい。融資先が傾いたとき回収処分できたのは特許ではなく、パソコン(物)だった」と述懐している。その後、信託法改正などで知財信託が可能になり、信託銀行が企業の特許権や著作権を運用した利益を還元するサービスを開始したり、銀行出身者が加わったベンチャー企業や特許事務所などで特許情報データベースを活用した特許価値算出手法が開発され、金融機関に販売されたりした。また、金融機関の子会社が企業間の特許流通仲介ビジネスを実施したり、知財の専門家を企業に紹介したりと、さまざまな挑戦があった。
そもそも中小企業や金融機関に知財に関する知識や意識がなければ、知財を金融に結びつけるのは難しい。このため90年代末ごろから、経産省は知的資産活用の研究と普及、実践活動を始めた。特許などの上位概念である「知的資産」(収益の基になる企業の知的無形資産)を洗い出して分析し「知的資産経営報告書」にまとめて経営に生かすためだ。さらに金融機関と企業が保有する情報のギャップをなくして相互理解を増進し、金融機関による企業相談支援や融資に結びつける狙いがあった。