■インフォーマルな教育が不祥事なくす
企業の不祥事は後を絶たず、それが原因で老舗の有名企業が消え去ってしまった事件は記憶に新しい。会社は問題が起こるたびに、ルールを強化し社員教育を徹底して再発防止を図ろうとする。シンガポールの法律のように、罪に対する罰則を強化するような手法を選択する会社も多い。ISO(国際標準化機構)認証取得では、不祥事リスク対応のために定期的な教育実施を義務化することがある。しかし、それでも不祥事はなくならない。不祥事をなくすには、「インフォーマルラーニング」が必要だ。
インフォーマルラーニングとは、研修というフォーマルな形で行われない全ての教育の機会を指す。ASTD(米国人材開発機構)では、人材育成の効果は「仕事を通じた経験により成長する機会」70%、「休憩場所でのアドバイスや食事をしながらの薫陶など」20%、「研修」10%、といわれている。
研修以外のインフォーマルな場における学びを、経営者やリーダーの生き方によって教えるのである。単にルールを守ること、勝負に勝ち残ること以上に、仕事を愛すること、顧客や同僚を愛すること、繁栄する良き社会をつくることを熱望することを教えていくのだ。
それが実現されれば、社員たちは不正や不祥事を憎み、正義を愛する人たちになるだろう。一緒に働くパートナーの人たちも、同じような考え、価値観になっていくはずだ。派遣社員やパートの一人一人にもその精神が伝わり、目の前の自分の利益のために善良な他の社員・仲間たちを悲しませたくないという気持ちになる。結果として不正や不祥事が自然と消え、反対に感動体験が続いていく。
一昨年、長野のある企業を訪問した。社員の皆さんが生き生きと働くこの会社では、経営者の理念が社員や社屋の隅々にまで行き渡っていた。