ジョブ型転換!?
こうした日本型雇用の行き詰まりは、劣悪な労働環境で社員を使い捨てるブラック企業の増加にもつながっている。若者の労働相談に取り組むNPO法人「POSSE」の今野晴貴(こんの・はるき)代表(31)は、近年大きな社会問題と化したブラック企業は「日本型雇用が変質したもの」だとみる。
今野代表は、諸外国と比べた日本企業の特徴は、企業の命令権の強さだと指摘する。「命令権の強さはそのままで、手厚い福祉や雇用保障を切り捨てたのがブラック企業」
この分析に対し、濱口氏は「たしかに日本型雇用にはブラック企業になりうるDNAがある。ただ、(定年までの雇用保障や年功賃金といった)それを発現させないためのメカニズムがかつては働いていた」と語る。「無制限に働かせはしたが、決して使い捨てにはしなかった。社員を安心してフルに働けるようにするという点で、欧米よりも社会の競争力を高める効果があったのも事実。単純に日本型雇用が悪いという話ではない」