太陽熱利用システムの設置例【拡大】
1970~80年代に太陽熱を利用して温水をつくる太陽熱温水器が普及したが、その後は需要低迷が続いている。機能面の制約や消費者の目が太陽光発電に向いたことなどが要因だ。ただ太陽熱を直接利用するため、熱需要を賄うならエネルギー利用効率が高い。太陽熱関連の業界は、一次エネルギー削減など太陽熱の特性を「環境価値」として認証することで、復権を狙っている。
太陽熱の利用機器は、集熱器と貯湯槽を屋根上に設置して給湯する温水器と、蓄熱槽を地上に置き給湯や暖房に利用するソーラーシステムがある。特に温水器は簡素な構造のため、80年には年間80万台が売れピークを迎えたが、2013年の導入台数は温水器とソーラーシステムを合わせて2万台程度だ。給湯器は30万円程度、ソーラーシステムでも60万円程度と安価だが、販売方法で社会問題化した企業が出たほか、「シャワーとの併用が難しいなど使い勝手の問題などもあって人気が落ちた」(ソーラーシステム振興協会の城出浩作技術部長)。
同協会の推定によると、現在でも全国で140万台が稼働。最近では、ヒートポンプ式給湯器の「エコキュート」と併用できるタイプも出ているが、需要は回復していないのが現状だ。ただ太陽熱利用は安価なほか、「標準的なもので屋根の面積が4~6平方メートルあれば設置できる」(城出氏)ため都市部の狭い屋根でも対応可能だ。給湯や暖房などの熱需要は電気を使うよりも、直接、太陽熱を使った方が効率は高いことは自明だ。4月に閣議決定された新しいエネルギー基本計画でも、地中熱や温泉熱と並んで、太陽熱についても「熱供給設備の導入支援を図る」と導入拡大を打ち出した。