◆耐震性強化で安全性向上
都市型ビルは狭い敷地に建てられることも多いことから、ZEB実証棟では耐震性を強化し、狭い敷地でも最大限に建築面積を確保できるように配慮されています。1階の柱に用いた超高強度コンクリート「Tas-Fine」は、世界最高強度で、一般のコンクリートに比べて10分の1の断面積で開放感ある空間をつくり、火災や地震の際の安全性を確保します。建屋地下には「都市型小変位免震」を導入。揺れの大きさに応じて抵抗力を切り替える新開発の「切替型オイルダンパー」によって、大地震が起きても30cm以内に横揺れが抑えられます。
見学の最後に、大成建設が新たに開発した「BIM-VR高速変換システム」のデモンストレーションを見せていただきました。BIM(※2、Building InformationModeling)のデータを、VR(VirtualReality=仮想現実)画像に1分半で高速変換するシステムで、3次元モデルや設計情報を立体画像として確認することができます。ZEB実証棟もBIMVR高速変換システムにより設計プロセスの検討・確認が行われました。
ZEB実証棟の今後の課題は何ですか? 「コストの低減が課題の一つです。また、さまざまな実証・評価で課題を一つずつ解決していき、20年までの商用化を目指したいと思います」(森川氏)
ZEB実証棟を見学して、未来の都市型ビルが「ゼロエネ」「快適性」「耐震性」「安全・安心」「デザイン性」といういくつもの要素を兼ね備え、想像以上に進化した姿であることに感嘆しました。実証棟に導入されている日本の技術力と創造力を世界にも大きくアピールしてほしいと思います。