日本進出の検討を開始した独パテントサイトのベルクマン出雲氏【拡大】
ドイツのボンに本社を置く、知財戦略支援コンサルティング会社のパテントサイトが日本進出をうかがっている。同社のベルクマン出雲氏がこのほど来日し、独自の特許資産評価指標「パテント・アセット・インデックス」やコンサルティングサービスなどの周知を目的に、大手企業や知財関連団体に説明して回った。
「簡単に言えば、当社が目指すのは、企業が獲得、保有する特許や特許ポートフォリオに着目した格付け会社」(ベルクマン氏)。知財情報解析など大学での研究成果を用いて、2008年に創業した大学発の企業だ。各国特許情報をベースに特に「サイテーション」や「パテントファミリー」に着目し、多様な技術分野での企業間の関係や相対的な知財の強弱などの解析、指標化、可視化などを通じて企業の技術・イノベーション・知財活用の戦略などに関するコンサルティング支援をしている。
「サイテーション」とは特許文献間の引用と被引用の関係のこと。一般に引用されることが多い特許は高い価値や収益を生むといわれている。また、同一の特許を国際出願する場合に全体をまとめて「パテントファミリー」と呼び、グローバルな製品化や特許権の権利行使をするベースとなる。国内でもこれまで、サイテーションやパテントファミリーを使った特許解析ツール、ソフトウエアが数多く開発されている。
パテント・アセット・インデックスに関してベルクマン氏は「他社の特許評価サービスとの最大の違いは、当社は評価手法をブラックボックス化せずユーザーに公開している点にある」と強調する。ユーザーは自ら検証できるわけで納得感が飛躍的に高まる。世界的な化学企業の独BASF、米ダウ・ケミカルをはじめ自動車、電機などの大手約30社が既に導入し、年次報告書や投資家・株主向けの説明資料などに活用しているという。
特許評価は、特許のライセンスや売買、オークション、上場、訴訟などの知財ビジネスが活発な米国が本場で、欧州企業が日本進出を検討するのは珍しい。しかし、中国に抜かれたとはいえ世界第3位の出願数を誇る日本の特許はグローバルな特許評価には欠かせない重要な存在だ。ドイツ企業の視点は日本企業自身が気付かない価値を掘り起こしてくれるかもしれない。(知財情報&戦略システム 中岡浩)