■「物」と「製法」、混在する発明の判断
特許庁が揺れた-。最高裁は先頃、ハンガリーの製薬会社、テバの高脂血症などに使われる医薬品の特許を協和発酵キリンが侵害したかを争う裁判で、「物の発明」の特許取得時における「クレーム」(請求項=特許の範囲を発明者が示す項目)に、製法で物を表現する「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」(PBPC)を用いることを原則否定する判断を下し、知財高裁へ差し戻した。
この判断で物の発明に関して製法の違いはほぼ意味がなくなった。意表を突かれた特許庁は、即座に物の発明でPBPCを含むと思われる一連の特許出願の審査と査定を7月上旬まで約1カ月間凍結すると発表。今後、産業構造審議会知的財産分科会の下にある審査基準専門委員会ワーキンググループで論議することを念頭に、審査基準見直しなどの検討へ向けた対応を始めた。
特許法上の発明には「物の発明」「方法の発明」「物を生産する方法の発明」の3種類がある。PBPCは「これまでは製法が特殊だと特許になりやすかったため、物の発明に用いられてきた。薬やバイオ、化学物質の分野の特許出願では比較的多くみられ、電気・電子系、機械系でも散見される」(アイアット国際特許業務法人の渡辺秀治・パートナー弁理士)という。