審査の迅速化を進めてきた特許庁。最高裁のPBPC判決の影響で揺れている【拡大】
最高裁が「物の発明」について特許取得時のクレーム(特許範囲を発明者が示す項目)に、製法で物を表現する「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」(PBPC)を原則採用しないとした判断に、特許庁の複数の幹部は「今後さまざまな影響が予想される」と驚く。
すでに、同庁は今後の方針を早期に示す必要に迫られている。現在、関連出願の審査を7月上旬まで止めているが、期限は刻々と迫る。新たな審査基準策定のため有識者や企業へのヒアリングに追われている。審査実務の遅滞を最小限に抑えるには、知財高裁や再度の最高裁の判断は待てないが、新方針で運用を開始した後に知財高裁や最高裁が再び異なる判断をする懸念が残る。
知財高裁との間には「調査官出向制度」があり、相互の知見を学んで、よりよい裁判、審査を目指してきた。「今回は(最高裁の判断で)特許庁が虚をつかれた」(都内弁理士)との見方もあるが、知財高裁は独立した機関であり、今後の展開は予断を許さない。