衆院平和安全特別委員会で民主党の岡田克也代表(左手前)の質問に答える安倍晋三首相。特許権の権利行使は、自衛権の発動と似ているところがある=6月26日【拡大】
延長国会で安全保障法制が論議されている。与党側の論点は国際社会の環境変化に応じた安保体制の確立にあり、法案に反対する野党は違憲性を問題にしている。安保問題と知財問題は次元の違う話だが、実は自衛権の発動と知財戦略における権利行使は似ている点がある。
日本は世界第3位の特許出願大国である半面、特許権の権利行使に関しては非常に消極的だ。具体的に権利行使とは、特許権の侵害先に対して文書で警告したり、特許権の利用についてライセンスを受けるよう交渉したりするほか、裁判に訴えて侵害されている特許権を使った事業や製品販売の停止、賠償金などを求めること。特許権は独占排他権で、外交・防衛問題に例えれば、特許権獲得はいわば領土や領海を定めること、権利行使は自衛権発動と考えていい。
日本企業は知財問題における“自衛権の発動”に非常に消極的だ。企業の知財部門の言い訳は山ほどある。「他の企業とトラブルになること自体が企業イメージを毀損(きそん)し、評価を下げる可能性がある」「金目当てで知財訴訟を起こすパテントトロールなどと混同される恐れがある」「経営層は賠償金獲得より調査・訴訟費用を抑えたいと考える」「権利行使がうまくいくか自信がない」「営業部門が相手企業と取引がある場合、社内から圧力がかかる」などだ。
また、大学からは「権利行使のための予算や体制がなく、権利行使に言及するレベルにない」という声も聞かれる。