特許庁審判部がある虎ノ門JTビル。PBPC記載に伴う不可能・非実際的事情に関する出願人の立証は特許審査のほか特許庁の審判事件も対象となる=東京都港区【拡大】
特許庁はこのほど、物の発明に関する特許出願における明細書上の「クレーム」(請求項=特許の範囲を出願人が示す項目)に「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」(PBPC=製造方法を記した請求項)が使われている場合の当面の審査方針を公表した。
PBPCについては、協和発酵キリンがハンガリーの製薬会社テバの医薬品特許を侵害したとする訴訟で採用を求めたが、6月の最高裁判決では認められず扱い方が課題となった。このため審査官が特許法適用などの判断基準とする「特許・実用新案審査基準」を検討する産業構造審議会知的財産分科会の審査基準専門委員会ワーキンググループ(審査基準WG)で急遽(きゅうきょ)論議されていた。
当面の審査方針では特許出願時点で、発明に該当する物をその構造や特性から直接特定することが技術的に不可能か、実際的でない事情(著しく過大な経済的支出や時間がかかるなど)がある場合(不可能・非実際的事情)に限りPBPCを認め、不可能・非実際的事情の立証責任を出願人に負わせた。出願人によって明細書で示された内容が不明確な場合、審査官は出願人に対して拒絶理由を通知し、反論、明細書の補正、事情の主張・立証などの機会を与えるが、引き続き不十分な場合、特許明細書の記載要件の一つである明確性がないと判断し、拒絶査定(特許権を認めない決断)とする。