【高論卓説】司馬遼太郎 没後20年に想う 誰もが偉大なリーダーになれる (1/3ページ)

2016.3.22 05:00

 今から20年前の1996年2月。一人の巨星が墜ちた。産経新聞記者出身の国民的大作家、司馬遼太郎氏である。

 残念ながらお会いしたことはない。しかし、「人生を創る」ことの醍醐味(だいごみ)を、数々の痛快な歴史上の人物を通じて、最初に私に教えてくれた大恩人だ。少なくとも、司馬氏の数々の著作がなければ、三方が山の埼玉西部育ちのノンポリ中学生は、国や社会のために都会で頑張ろうと心を震わせ、勉学に励むことはなかった。

 司馬氏の著作が、私はもちろん、国民的な共感を呼んだ背景には、2種類の「矛盾の統合」があると思う。

 一つは、理性と情熱の統合だ。記述が「非常に理性的かつ情熱的」という不思議な昇華がある。文春文庫の著作に特徴的だが、「これは小説だろうか」と感じるほど、ノンフィクション的な史実の正確な記述がある一方、生の輝きを情熱的な筆致で描写し、小説の持つ訴求力を遺憾なく発揮している。

 「泣こよっか、ひっ翔べ」(泣いて悩むなら、思い切って飛べ)と育てられた薩摩隼人、特に西郷隆盛や大久保利通の友情と相克を軸に、明治初期をドキュメンタリー的に正確に、同時に、生き生きと描いた『翔ぶが如く』に胸を躍らせて官僚になった元同僚は少なくない。

 つまらない歴史の授業のような事実の羅列でもなければ「大久保はスーパーマンだ」みたいな扇情的描写でもない不思議な「矛盾の合一」。司馬氏は評論などで「昭和陸軍のリアリズムの欠如」をよく批判するが、まさに、ご自身は徹底したリアリズムを重低音としながら「生を得るための、断崖からの死の跳躍」を活写したと言えるのではないか。

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