【高論卓説】出でよ、ゲーム・チェンジャーたち

2017.1.18 05:00

 ■「不確実性」時代 新たな価値観に脚光

 何やら嫌な時代になってきた。間もなくトランプ新米大統領が誕生するが、早くも、各国や著名企業などに対して「敵意」と「憎悪」をむき出しにしている。「壁」の費用負担など、目の敵であるメキシコはもちろん、新設の国家通商会議議長や米通商代表部(USTR)代表に対中強硬派が並んだことで、中国は、憤慨・当惑しつつ、目前に迫る厳しい交渉に備えていることであろう。11日のトランプ氏記者会見にて複数回名指しで非難されている日本も例外ではない。

 先日、ついにトヨタ自動車がツイッターで「口撃」されたと報道された。メキシコなどへの工場新設を検討している各社は、「次はわが社」とビクビクしているし、逆に、早々にトランプ詣でをして安心のお墨付きを得るのに必死な会社もあり、傍目には滑稽だったり醜悪だったり、何とも嫌な光景である。

 欧州に目を転じれば、欧州連合(EU)離脱の最終形が見えない英国に加え、昨年末にはイタリアでも首相が交代した。

 オーストリア大統領選で極右候補が僅差で敗れたのもつかの間、今年は、オランダやフランスでの極右政権誕生が現実味を帯びている。テロが頻発しているドイツのメルケル政権も選挙を控えているが、安穏とはできない。

 クリミア半島を強奪して、先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の制裁包囲網に苦しんでいたロシア(プーチン大統領)は、(1)EU離脱を前にすり寄りつつある英国(2)ロシアへのラブコールを隠そうともしないトランプ氏(3)極右のルペン氏ではなく中道右派のフィヨン政権でも好転が期待できる対仏関係-などを前に、「やはり国際政治は力だ」と自信を深めていることであろう。

 そのプーチン氏指示による米大統領選挙への介入(クリントン氏勝利への妨害工作)が話題となっている。KGB出身のプーチン大統領は、当然、各国でのさまざまな工作を指示しているであろう。少し前から、トランプ氏が、やけにロシアに対して甘いのが気になっていたが、やはりという感じで、スキャンダルネタをロシアにつかまれているとの報道も出ている。例えば、北方領土を含む対露交渉での日本の世論工作も行っていると覚悟した方がよいであろう。

 想像するに、大戦前の世界(1930年代)は、こんな感じで推移したのかと思うが、わが国を含む各国で、他国への怒り・憎悪が盛り上がり、日々の暮らしや社会に暗い影を差している。話題の映画「この世界の片隅に」では、「戦時中」であっても、終戦間近まで「日常は日常である」様子がとても印象的に描かれているが、同時に、忍び寄る暗い影も、濃厚に描写されていた。今、突然に形を伴って訪れる悲劇の前の嫌な感じが漂っている。

 ただ、時代を創るリーダー(変革者)たちは、わが国の歴史では幕末が典型だが、混乱期・激動の時代に生まれてきた。好き嫌いはともかく、ある意味でトランプ氏もそうだが、価値観をひっくり返して時代を創る「ゲーム・チェンジャー」が生まれる土壌は、社会にうずまく不安と不満かもしれない。

 昨年末、古巣の経済産業省で「新産業構造ビジョン」を書いているメンバーたちと飲み会をやり、「世界に誇れる日本を創る面白いゲーム・チェンジャーだ」と考える知人たちにも来てもらった。

 ミドリムシを活用したバイオ燃料の生産でエネルギー革命を考えているユーグレナの出雲充さん、複雑なものを変に単純化しない「なめらかな社会」を築くべくニュース配信アプリで民主主義を守るスマートニュースの鈴木健さん、日本が誇るコンテンツ(映画・小説)などを用いて世界への訴求も図る映画プロデューサー兼小説家の川村元気さん、凝縮系核融合を実現して日本や世界のエネルギー制約を取り除こうとしているクリーンプラネットの服部真尚さんらだ。

 皆、良い時代・社会を創ろうと必死で、こうしたリーダーたちがいる限り、日本や世界の未来は明るくも思える。スタートしたばかりの2017年。今年はどんなゲーム・チェンジャーと会えるか。また、自分自身が明確な「始動者」になれるか。ワクワクする気持ちもないではない。

                   ◇

【プロフィル】朝比奈一郎

 あさひな・いちろう 青山社中筆頭代表・CEO。東大法卒。ハーバード大学行政大学院修了。1997年通商産業省(現経済産業省)。プロジェクトK(新しい霞ヶ関を創る若手の会)代表として霞が関改革を提言。経産省退職後、2010年に青山社中を設立し、若手リーダーの育成や国・地域の政策作りに従事。中央大学客員教授。43歳。

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