
東京大学で教鞭をとる渡部俊也教授。新たなエキスパティーズを持つ人材の養成が始まっている(東京・本郷)【拡大】
■新たなエキスパティーズ必要
第4次産業革命へ向け知財部門は対応できるか。そこに将来必要となる人材について、渡部俊也・東京大学政策ビジョン研究センター教授に聞いた。
--前回まで第4次産業革命の時代には、ビジネスモデル構築やデータなどにも知財を扱う際の感覚が必要なことを聞いた。では知財部門の行方はどうなるのか
「先頃、企業の知財部門担当者を集めたセミナーで、IoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)の時代にはビジネスがデータ主導型となるが、データについては知財部門が担当すべきだと言うと、反応は非常にまだらで、そんなこと言われても、という感じはあった。人材トレーニングなど知財部門に準備ができているのかというと、まだ途上にある」
--もし知財部門が無理だと言ったら
「少なくとも誰かがやらないといけない。経営戦略の3階層である機能戦略、事業戦略、全社戦略まで関与できる、知財法務のようなエキスパティーズ(専門知識)が必要になるだろう。そこでは特許法が得意と言っても何も役に立たない。著作権、不正競争防止法、民法の不法行為の知識は欠かせないし、特許に加えまさに主戦場となりつつあるデータや、社外とのアライアンスでもたらされる関係資産など、さまざまなリソースを次のビジネスモデルへ当てはめ、組み立てる能力が必要になる」