
ジャイカさん(右)と父親のナルシーソ・ドゥマランさん=2月、フィリピン・オルモック(共同)【拡大】
1991年の大型台風で数千人の死者が出たフィリピン中部レイテ島オルモック。国際協力機構(JICA)などの協力で治水対策を進め、2013年の大型台風での犠牲者は38人だった。支援への感謝から娘を「ジャイカ」と名付けた住民も。台風禍を経て、防災意識を次世代に引き継ごうとしている。
91年11月、台風25号がオルモックを襲い、中心部を流れる2つの川が氾濫、多くの人が泥流に巻き込まれた。JICAの洪水対策専門家を務めた国土交通省の室永武司さんによると、暴風雨で山から押し流されてきた大量の木が橋でせき止められ、天然のダムに。上流からの水がたまり崩壊、爆発的な勢いで泥や水、木が市街地に流れ込み、甚大な被害を受けた。
被災後、JICAや関係機関が支援に乗り出した。天然ダム決壊が被害を大きくした教訓から、流木はせき止め、水だけを流す「くし形」のダムを川の上流に設置した。市街地の河川敷には堤防やフェンス、街灯を設けた。多くの命をのみ込んだ川の周辺は憩いの場にもなっていった。