批評ばかりする人に「では、お前がやってみろ」と切り返すと大体は口をつぐんでしまう。が、「オレたちにやらせてみろ」と身を乗り出す人もいる。物言う株主として知られる投資家の村上世彰(よしあき)氏と関係者らが、電子部品商社の黒田電気株を買い集めて社外取締役を送り込むことに成功した。果たして言ったことを実行する力量を備えているのか。
物言う株主の本分
物言う株主は経営の「改善」を積極的に要求する者だ。増配を実現したり、株価を引き上げたりした後で株価を売却して利益を得る。黙って配当や株価が上がるのを待つ、他の株主とは違って行動する。
村上氏らが行動する舞台として選んだ黒田電気。経営陣は配当政策の見直しなどに踏み切る一方で、経営介入に反対する社員声明を事実上捏造(ねつぞう)してまで防戦。村上氏らを取締役に選任する議案を受けた臨時株主総会を薄氷の勝利ではあったが、乗り切った。一昨年のことだ。
だが村上氏側はあきらめず、同社株を買い進めた。今年6月の定時株主総会で他の株主の賛同も得て、村上氏が通商産業省(現経済産業省)に勤めていた時代の上司で一橋大客員教授の安延申氏を社外取締役として送り込んだ。
平成21年のアデランスホールディングス(現アデランス)の総会で米ファンドが提案した取締役選任議案が可決されて以来の出来事。村上氏の著書『生涯投資家』(文藝春秋)が6月に出版されたのを祝うような勝利である。