【Bizクリニック】在宅勤務活用 労働者・情報管理徹底を

2013.10.29 05:00

 □弁護士法人はるか 弁護士・六川祐介

 わが国の雇用には少子高齢化に伴う問題点がいくつかあります。保育園の待機児童問題は解消されず、働く女性にとって出産には一定のハードルがあります。厚生労働省によれば、第1子出産前後の女性の継続就業率は2005~09年平均で26.8%にすぎません。高齢化の観点では、介護と仕事の両立が難しいため今までのキャリアを諦めざるを得ない場合もあります。

 問題を解決する方法の一つが在宅勤務制度です。企業側も勤務スペースを気にせずに人材を獲得できるほか、省エネなど多くの利点があります。ただ大手企業は増加傾向にあるものの、国内全体では導入例が少ないのが現状です。ネックとなっている「労働者管理」「情報管理」の理解と徹底が望まれます。

 特に問題となるのが労働時間管理です。厚労省もガイドラインを設けていますが、厳密な時間管理が困難なため「みなし労働時間制」を採用する企業が多くあります。これは、あらかじめ勤務時間を決めるもので、会社の指揮監督が及ぶ時間が不明確な場合に認められます。

 例えば、常に連絡を取れるように携帯電話の所持を指示すると会社の指揮監督下に常時あるので、みなし労働時間制は認められません。同様の例で営業社員について否定した裁判例があり、在宅勤務にも当てはまります。

 在宅勤務中に事故に遭った場合、労働災害となるかも大きな問題です。一般的に労働災害か否かは、労働者が事業主の支配下にあることで生じる危険が現実化したか否かで判断されます。例えば自宅の火災でけがをした場合は自宅での勤務という結果のため、労働災害として認められる可能性は大です。在宅勤務中に崖崩れで自宅が崩れ、負傷した場合も同様です。会社から宅配便が届いて玄関に向かう途中やトイレに行く際に転んだ場合も同様と考えられます。

 在宅勤務による情報漏洩(ろうえい)について、主だった裁判例は現在ありません。裁判になるほど事態が深刻ではないか、在宅勤務の導入が少ないためと考えられます。しかし職場内での情報管理から離れるため、危険は常にあります。仮に在宅勤務中に情報が漏洩して第三者が損害を被るような場合、企業は損害賠償を請求される可能性があります。

 したがって社内ルールの策定はもちろん、在宅環境で接触可能な情報の範囲に制限を加えるファイアウオールの設置といった対策が必要となります。この点につき、総務省は今年3月に「テレワークセキュリティガイドライン(第3版)」を発表しており、16年度をめどに在宅勤務採用時の情報セキュリティーの指針を策定する予定です。

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【プロフィル】六川祐介

 ろくがわ・ゆうすけ 上智大法卒。2011年弁護士登録(長野県弁護士会所属)。同年弁護士法人はるかに入所。借金や離婚、交通事故関連など一般民事を広く扱う。最近では労働法務の取り扱いも多い。30歳。

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