思春期の女性を多く描いてきた島本理生さん(31)が長編『Red』(中央公論新社)で、家庭を持つ30代女性の性愛と苦悩に迫っている。自らも結婚と出産・育児を経験し、「子供側の視点に100%は戻れないと感じた。それならガラッと変えて同年代の人に読んでもらえるものを、と」。早熟な作家の転機となりそうな、力強く濃密な物語に仕上がった。(海老沢類)
「白」から「赤」へ…
語り手の〈私〉こと村主塔子は夫と2歳の娘、夫の両親と同居する主婦。地味な外見に劣等感はあるものの、美形の夫は収入も十分だし、しゅうとめと反りが合わないわけでもない。外面上は何不自由ない生活だが夫とはセックスレスが続いていた。そんなある日、塔子は友人の結婚式で、10年ほど前に互いの身体を激しく求め合ったかつての恋人・鞍田と再会する。〈自分の意志を超えて細胞から引きずられてしまう〉。快楽の記憶に引き寄せられるように逸脱を繰り返す2人の様子が濃密な性描写を交えてつづられる。