【最先端の鬱治療とは(1)】思いもしなかった結果が…大脳血流で鬱診断「光トポグラフィー検査」

2015.1.26 11:00

光トポグラフィー検査を受ける記者=東京都新宿区西新宿の新宿メンタルクリニック

光トポグラフィー検査を受ける記者=東京都新宿区西新宿の新宿メンタルクリニック【拡大】

  • 光トポグラフィー検査を実施するための専用装置
  • 専用装置に表示される脳透過図が問診の補強材料となる(新宿メンタルクリニック提供)

 職場で強い不安、悩み、ストレスを抱えている労働者が増えている。平成25年度には精神疾患を原因とする労災請求件数が過去最高を記録。26年上半期をみても企業が雇用する精神障害者の割合が急増した。精神疾患の中でもとくに鬱病は最低でも4、5カ月の治療が必要とされ、職場からの長期離脱を余儀なくされることも多い。早期復帰には適切な診断、治療が不可欠だ。一昨年に鬱(うつ)症状と診断され休職を経験した記者が最先端の精神医療をリポートする。

 「『あ』で始まる言葉は?」。静かな個室に置かれたモニターの指示に従って「頭」「あんず」と思いついた名詞を口に出して挙げていく。赤と青の端子がたくさん付いたヘッドギアを動かさないよう気をつけながらゆっくりと話す。これを3セット繰り返し、わずか3分ほどで検査は終了した。

 近赤外線を用いて大脳の毛細血管の血流を測定する光トポグラフィー検査。前頭葉前部と左右の側頭部の3カ所について、言葉を考えたときの血流の増え方をチェックする。波形にすると健常者、鬱病、躁鬱病、統合失調症でそれぞれ典型的なパターンを示すという。誤診を防ぐ最先端の検査法として注目されている。

 検査の結果が出るまで5~10分ほどという。トリーターと呼ばれる技師と雑談をかわしながら待つ。検査の前には1時間以上に及ぶ問診を受けている。症状が出てから今に至る状況、子供時代のエピソードまで事細かに聞かれた。プライベートなことを聞いてもらえるだけでとても落ち着いてくる。

 検査を受けた新宿メンタルクリニック(東京都新宿区西新宿)によると、2014年11月までの来院者の職業別内訳は会社員が約3割を占めるという。

 厚労省の2013年「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」によると、精神障害の労災請求件数は1409件と過去最高を記録。今年に入ってからの障害者雇用状況(従業員50人以上の民間企業、公的機関が対象)をみても、6月1日現在で精神障害者が約2万8千人と前年比24.7%も急増している。記者自身も鬱症状と診断されて13年12月から休職した。既に復職しているが、今回検査を受けたのはきちんと完治しているのか、再発の恐れはないのかを知りたかったからだ。

 まず記者の鬱体験を記す。不眠に悩み始めたのは東日本大震災のあった2011年3月頃。数年前から解決しないプライベートの問題に加えて、被災地に実家があったことでストレスが増したのかもしれない。夜中の2時、3時に目が覚めて朝まで眠れない日が続く。勤務医に相談したところ、睡眠導入剤を処方された。

 幸い不眠は解消し、薬を服用しながら問題なく勤務を続けていたが、2年半後に薬を服用しても眠れなくなった。仕事がうまくいっていなかった。無理難題ばかり押し付けられていると被害者意識が強くなり、イライラが募り突然泣きたくなる。勤務医から薬を初めて処方された際に「鬱だ。不安なら病院へ行くように」と言われていたこともあり、自宅近くのメンタルクリニックへ。長時間の問診を経て鬱症状と診断されて休職することになった。

 抗鬱剤と睡眠導入剤を処方され「何もせずに何も考えずに寝てください」と指示を受ける。2度の離婚、停職処分など数々の不始末をしでかしてきた記者だが「ついに精神病になってしまった」と泣きながら1日20時間くらい寝る生活を1週間ほど続けたところ、かなり調子がよくなった。頭もすっきりして普通に外食もできる。

 1カ月もすると休んでいることが後ろめたくなり、早期復職を希望。担当医師には「再発したら取り返しがつかない」「揺り返しが必ず来ます」と諭されたが「働かないとかえって不安だ」と訴えて休職から1カ月半後の14年1月中旬に復職した。ふっきれたのだろうか。以前ほど責任感がなくなった負い目は感じるが、無理なく働いている。それでも時々鬱状態の自身を思い出しては「もうあの頃の自分に戻りたくない」と震えている。

 検査後ほどなくして呼ばれた診察室に入ると、穏やかな表情を浮かべた川口佑院長が「あなたが思いもしなかった結果が出ましたよ」。目が点になる記者。

 ⇒【最先端の鬱病治療とは(2)】は27日掲載。

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。