「ちょっとそこの人! 写真を撮らないでっ!! 鉄道の撮影は禁じられています!」
厳しい声とは裏腹に、のんびりした足取りで駅員が近づいてきた。いいタイミング。ちょうど質問したいことがあったのだ。
「すみません。ところで先頭車両に数字が表示されていますよね。あれは何を意味しているのですか」
「あの番号は、列車番号です」と駅員。
しかしこの表示は19号なのか、それとも20号なのだろうか。
「どちらでしょうね。いいんですよ、フィリピン人は誰もそんなことは気に留めていませんから」。明るく笑い飛ばされてしまった。
「とにかく、写真を撮影しないでくださいね」
鉄道の写真を撮れない国は、フィリピン以外にもいくつかある。フィリピンの場合は、治安維持の都合から撮影を禁止しているそうだ。こんなとき“報道の自由”を主張する手もあるが、私の場合はおとなしく引き下がることにしている。
すると、プラットフォームにいた女性が声をあげてくれた。
「いいじゃない、電車の写真くらい撮ったって」。
すると驚くことに、駅員はちょっと考えて、なんとこう言った。