宮崎駿氏や押井守氏といった監督とは別に、アニメーション作りの現場には“監督”と呼ばれる立場の人がほかにもいる。それが「音響監督」。若林和弘氏(50)もそのひとりで、宮崎監督の「千と千尋の神隠し」や押井監督「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」などに携わった。デジタルハリウッド大学(東京都千代田区)が若林氏を招いて先頃行った公開講座では、音の力でアニメーションを盛り上げる音響監督の仕事の面白さや大変さが語られ、日本が世界に誇るアニメーションが多彩な才能によって作り上げられていることが示された。
音響監督とはどんな役職か。アニメーションを見ていて聞こえてくる声優の演技や効果音、流れてくる音楽などの面倒を見る人で、目に見える部分をアニメーション監督が担うなら、音響監督は耳に届く部分の責任を負っている。
アニメーションで状況にそぐわない演技があったり、音楽が鳴ったりしたら、たとえ絵が完璧でも作品は台無しになる。それだけに音響監督の仕事には「経験が必要」と若林氏は話す。「自分の好みばかりでは破綻する」ため、アニメーション監督も含めたスタッフの意向を反映させ、その中に自分ならではのこだわりも入れながら音を作っていくという。