本来の計画では、若くて健常な住人の所得が増すことで住み替えによって他のエリアに移る一方、手ごろな住宅価格、あるいは家賃、ほどほど良好なロケーションをもとめて新たな住人が流入してくると踏んでいた。
しかし、その新陳代謝は進まなかった。学識経験者、東京都、多摩市、UR都市機構からなる「多摩ニュータウン再生検討会議」のレポートは、限界集落化は住民の入れ替わりがうまくいかなかった理由として、高度経済成長が終焉し所得が思うように上がらなかったことや、バブル発生で住宅価格(家賃)が高騰し、住み替えようにもここ以上の条件の住宅が見つからなかったことを指摘している。
親世代の初期入居者はそのまま住み続け、子ども世代は通勤通学がより利便性の高いエリアに流出。眺めがウリだった高台が、高齢化とともに致命的な欠点と化しているのだ。横浜や横須賀のロケーションとよく似ている。
人口減を見越してJR中央線が「減便」
では、都心を除いても、住みたい街ランキング上位、例えばJR中央線沿線などは安泰なのだろうか。実は東京駅から30キロメートルを超える立川駅以西や枝線ともいえる青梅線・五日市線沿線では、すでに人口減や空き家問題が顕在化している。そのあたりを見越してか、昨年のダイヤ改正からJR中央線、青梅線の一部が減便されているのだ。
毎年行われている地方移住のための相談会にも、東京西部の福生市、瑞穂町、奥多摩町などが合同でブースを出し、地方のような「空き家バンク」開設も含めて、地方移住を考える人たちに東京都内でのライトな田舎暮らしを提案している。新宿からJR中央線で30分圏内の小金井市でも、官民で空き家の有効活用を推進する会議がスタート。現在人口が増えている自治体でも、人口減への危機感を持っているのだ。