ポルトガル・首都リスボン【拡大】
ロンドンで米競売大手クリスティーズが予定していたスペインの画家、ジョアン・ミロ(1893~1983年)の作品85点のオークションが2月4日、開始の数時間前に急遽(きゅうきょ)、中止された。借金苦にあえぐポルトガル政府が、欧州経済危機で破綻し国有化された銀行から差し押さえた作品を売ろうとしたところ、「国家的な文化損失だ」などの異論が噴出。野党が起こした競売差し止め訴訟に対し、裁判所は売却を認めたが、クリスティーズの判断で取りやめになった。政府はあくまで売却する姿勢を崩しておらず、国を二分する「芸術か、カネか」の論争は止みそうもない。
負債削減のため
「進行中の論争によって司法的な不確定要素が生じた。これはわれわれが安全に商品を販売できないことを意味している」。クリスティーズは声明で、4、5日に行う予定だった競売の中止理由をこう説明。「われわれには、商品の法的所有権を問題なく買い手に移転する責任がある」とし、落札者にとばっちりが及びかねない現状に懸念を示した。