【佐藤優の地球を斬る】
イスラエル政府とパレスチナ自治政府のガザ地区を実効支配するイスラーム教スンニー派原理主義過激派ハマスとの間に無期限停戦協定が成立した。「約束はしたが、それを守るとは約束しなかった」というのがハマスの常套(じょうとう)手段だ。ハマスが停戦に応じたのは、このままイスラエルとの戦争を続けると幹部が皆殺しにされると恐れたからだ。特に、8月21日にイスラエル軍がガザ地区南部を空爆し、幹部3人を殺害したことで、ハマスは震え上がった。パレスチナの一般住民を「人間の盾」にして、聖戦(ジハード)を訴えるハマス幹部が、自己保身しか考えない小心者であることが、可視化された意味は大きい。
体面優先の勝利宣言
しかし、ハマスは今回の戦争に「勝利」したと虚勢を張っている。その理由について産経新聞カイロ支局の大内清支局長はこう記している。
<ハマスはイスラエルの作戦で秘密トンネル網だけでなく多数の軍事部門幹部を失い、軍事力の要であるロケット弾の保有数も大きく減らした。