【続・灰色の記憶覚書(メモ)】
運転免許証を持たない私は、いつだって当然の如く助手席に陣取るばかりで、正月ともなると、どこそこへあいさつなどという際にも、何を気にすることもなく、酒を飲めて幸せである。かといって、あんまりふんぞり返っていては、運転をしてくれている妻に悪いので、ありがとうありがとう、と感謝の気持ちは忘れない。
感謝しようがしまいが免許証を持たないのであるから、それなら運転免許証を取得しなさいという話にはもちろん幾度となくなるのだけれど、四十路を目前に、まとまった時間を作って合宿というのも難しいというか、照れくさいような気もしてしまって、決断ままならないし、教習所に通うというのも、ずぼらな私が上手に継続できるとは信じ難い。
凶器にもなりうる鉄の塊
それよりも、私にはもっと切実な思いと言うか、考えがあって、そもそもああした鉄の塊が大きな顔をして町内を走り巡っていることに対する不信感、例えばガードレールのこちら側(無免許の私がガードレールのこちら側と言う場合は歩行者側)を闊歩(かっぽ)していても、向こうから道にそぐわぬ大型車などが、法定速度ギリギリの様子でやってきた際には、さっと飛び退くにはどちらへ飛び退くべきかというようなことを瞬時、思い浮かべてしまう。