【国際情勢分析】
ロシアで、国家資金や利権を側近に分配するウラジーミル・プーチン大統領(62)流の人心掌握術に陰りが出てきた。米欧の対露制裁や国内経済の低迷に伴い、政権が押さえている資金源そのものが細りつつあるためだ。縮小する利権の「パイ」を争い、政権派エリート層の内部対立が激化する可能性も指摘されている。
象徴的軍需企業伸び悩み
政府は、特殊国策会社「ロステク」傘下の製薬企業を、結核とエイズ、肝炎の治療薬と血液製剤を国に納入する独占業者に指定する方向で検討に入った。ロステクを率いるセルゲイ・チェメゾフ社長(62)が旧友のプーチン氏に要請していたもので、公式には「医薬品の輸入を減らし、国産化を促すことが狙い」と説明されている。
ロステクは、軍需企業など700社以上を擁する巨大コングロマリットで、プーチン政権の「縁故資本主義」を象徴する存在。結核薬などの分野では、ロステク系が製薬会社から製品を購入して国に納める仲介役を担い、将来的には業界の統合を進める思惑とされる。