2020年東京五輪の公式エンブレムが発表からわずか1カ月余りで白紙撤回に追い込まれた。新国立競技場の建設問題に続いて、5年後に向けた準備に大きな汚点となる。ベルギーの劇場ロゴに似ているとの疑惑を払拭しようと、大会組織委員会が開いた“潔白会見”もあだとなり、スポンサーには不満の声が広がる。新たな大会シンボルの選定は難航が予想される。
火消しのつもりが「やぶ蛇」
「国民の支援がないエンブレムを使い続けることは、東京大会を成功に導くという考えにそぐわない」。組織委の武藤敏郎事務総長は1日の記者会見で、取り下げの決断に至った理由をこう説明した。
相次ぐ類似作品の出現で追い詰められた組織委は8月28日、佐野研二郎氏のデザインの原案を公表した。劇場ロゴとは「まったく異なる特徴がいくつもある」として独自性を強調し、盗用疑惑を完全に打ち消す狙いだった。だが、組織委の思惑とは裏腹に、騒動はむしろ拡大した。
インターネット上ではすぐさま、この原案が2013年に開かれた「ヤン・チヒョルト展」のポスターデザインと「酷似している」と指摘され、新たな盗用が疑われた。さらに、佐野氏が制作したエンブレムの展示例の画像が他人のサイトを無断流用していた疑惑も浮上。東京都幹部は「火消ししようとしたらやぶ蛇になった」と裏目に出たと見る。