幼少時から野球少年だった私には、泥臭いプレーが染みついている。汗にまみれ、歯を食いしばった鍛錬の先に勝利がある-。指導者たちからそんな言葉をかけられ続け、必死に前を向いてきた。そんな日本流の「野球」とは違い、ニュージーランドで「ベースボール」は随分とクールなスポーツだととらえられている。
オークランドで12~15歳の子供たちがプレーするクラブチームで定期的に指導している。ニュージーランドでは、ビッグクラブの一つといえる。初めてニュージーランドに行ったとき、通訳をしてくれた日本人女性が、クラブの代表の奥さんだった縁からだ。
練習はスタートから違和感に襲われる。キャッチボールをする子供たちが、ノックを受ける子供たちが、とにかく静かなのだ。日本の原風景のような掛け声がないからだ。バットを構え、投手を務める私に「お願いしまーす」の声もない。ニュージーランドに来て、日本の根性野球を押しつけるつもりはない。むしろ無駄な声だしは不要だと考えている。