【石平のChina Watch】
さる6月24日、中国の温家宝首相は訪問先のイギリスで中国の経済問題に関する注目の発言を行った。今年の消費者物価指数を4%以内に抑える政府目標の達成が「困難である」と認めたのである。
中国政府がこの数値目標を掲げたのは確か年初のことであったが、それ以来半年間、政府は「月1度」という前代未聞の高い頻度で預金準備率の引き上げを断行するなど、一連の金融引き締め策を実施してインフレの抑制に必死であった。しかしそれが「目標達成困難」となったなら、政府のインフレ抑制策は現時点では失敗に終わった、といえる。
本欄がかねて指摘しているように、中国のインフレは過去数十年間にわたる貨幣の過剰供給の必然の結果であるから、短期間の金融引き締め策の一つや二つで収まるような性格の問題でもない。温首相は上述の談話で「今後のインフレ抑制は可能だ」とも語っているが、現実はそう甘くはない。6月の消費者物価指数は5月のそれよりも大幅に上昇していることが確実となった一方、「7月のインフレ率は6月よりもさらに高くなる」との予測が中国農業銀行からも出されている。中国人民銀行貨幣政策委員会の李稲葵委員に至っては最近、向こう10年間、慢性的なインフレが問題であり続けると暗澹(あんたん)たる見通しまで示している。