■大企業の内部留保活用で消費刺激を
昨年の総選挙の結果、自民党と公明党の連立による安倍晋三政権が発足しました。安倍首相は「アベノミクス」で強い経済をつくるとし、「緊急経済対策」を発表。しかし、「三本の矢」として掲げた(1)「大胆な金融緩和」(2)「大型開発などの財政出動」(3)「規制緩和などの成長戦略」については、率直に言って新しい中身は何もありませんでした。
◆折れた矢を束ねても…
「金融緩和」は、かつての自民党政権時代にも散々やりましたが、効果がなかったものです。「大型開発」も経済成長にはつながらず、借金の山を残しただけでした。「規制緩和」も、貧困と格差を広げて破綻した小泉「構造改革」の焼き直しです。失敗ずみの“折れた矢”を3本束ねてみても、何の役にも立ちません。
そもそも安倍政権による「緊急経済対策」の最大の特徴は、なぜ日本経済のデフレ不況がここまで深刻化したかについての、原因の分析が見当たらないことです。病気だって診断ができなければ、治療方針が立てられません。安倍政権がまともな処方箋が打ち出せないのも当然です。
デフレ不況の原因の診断ははっきりしています。働く人の所得が減り続けているからにほかなりません。1997年を100とすると、2011年の企業の経常利益は163まで増えているのに対して、雇用者報酬は88。その結果、消費が落ち込み内需が冷えてしまっている。ここに最大の問題があります。
診断さえつけば、治療方法は明らかでしょう。国民の所得を増やす経済政策への抜本的な転換です。