30年ぶりの北京駐在も1年9カ月になるが、40年余りの記者人生で今回ほど苦しんだことはない。着任3カ月でぜんそくが出始め、酸欠のためか夜中に悪夢にうなされる。血圧も1年を過ぎた頃から上がり、170を超えることも珍しくなくなった。
大気汚染と独裁国家の首都独特のストレスのせいだろうが、60代半ばの身にはことのほかこたえる。自宅に前任者から譲られた中国の大手メーカーの空気清浄機が2台あったが、効果がない。つけると薄ら寒い風がじゅうたんや布団のほこりを踊らせ、くしゃみが止まらなくなる。「日本製は違う」と聞いてはいた。だがこの悪印象が強過ぎて鍼(はり)や漢方薬に頼ったが、効果は長続きしない。
ところが最近、本社の指示で日本の空気清浄機を仕事場と自宅の寝室に設置して仰天した。まるで高原のロッジにいるような爽やかさで執筆ははかどるし、悪夢に苦しむこともなくなった。「こんなに違うと分かっていれば自費で購入していたのに!」と愕然(がくぜん)としている。
習近平主席は「今ほど中華民族の偉大な復興という夢の実現に近づいたときはない」と言う。だが毒ガスのような濃霧の中、マスクもつけず道路工事をしている人々の夢は一体、いつかなうのだろうか。(山本勲)