消費税率引き上げは決まったが、社会保障制度を立て直し、大赤字に苦しむ国の財政を再建するという本来の目的を果たせるか、早くも疑問視されている。新たに5兆円規模の大規模な経済対策が追加され、昨年の3党合意時点とは大きくシナリオが変わったためだ。
消費税率引き上げは、本来、社会保障の安定財源確保が目的だ。年金、医療、介護などへの給付費は2012年度に110兆円に達したが、財源となる社会保険料などは60兆円程度。差額のうち40兆円を国税、地方税、国債発行(借金)でまかなっている。国の税収が40兆円台という中で大きな負担である上、社会保障関係費は今後も毎年1兆円規模で膨らみ続ける。
大和総研の市川正樹主席研究員は「負担と財源の差が毎年約1兆8000億円広がってきたことを考えると、消費税率が10%に引き上がったとしても7年程度で食いつぶす」と指摘する。
しかし、現状では社会保障給付について、具体的な削減案がない状況で、医療費など給付の抜本的な改革が急務だ。