自転車ロードレースの最高峰「ツールドフランス」の名を冠したレースや、来年3月の世界フィギュアスケート選手権など、埼玉県がスポーツのビッグイベント誘致に次々と成功している。仕掛け役は、さいたま市や地元経済界などが協同で設立した「さいたまスポーツコミッション(SSC)」だ。特長のある観光資源の少ない埼玉が地域振興の活路をスポーツに求めた新たな取り組みは、全国的にも注目されている。(森田景史)
26日に、さいたま新都心で開かれる自転車の国際レース「さいたまクリテリウムbyツールドフランス」。今夏で100回を迎えた歴史ある大会の名称が、本場欧州以外で使用を許されるのは初めて。世界の強豪が参加するレースは132カ国に中継される。
大会誘致に成功したSSCは、映画撮影の誘致を観光振興につなげたフィルムコミッションのスポーツ版。さいたま市長が会長を務め、県や市、地元経済界、地元メディア、サッカーJ1の浦和と大宮などで構成。埼玉にスポーツ大会やイベント誘致のため、大会主催者へのセールスや宿泊・輸送のマネジメント、マーケティングを一手に担っており、縦割り行政の弊害もない。
埼玉には、J1の2チームが本拠地を構え、さいたまスーパーアリーナなどでは国際競技大会の開催実績も豊富。「観光の見どころはないが、成熟したスポーツ文化がある。これを生かすため、スポーツ大会の開催権を自分たちで取りにいこう、という発想が出発点」とSSCの星野正副参与は話す。
ツールドフランスには「サイクリング市場は経済への波及効果が大きい。埼玉のブランド向上にも効果的」(星野氏)との期待もある。SSCは精力的なセールスで、2011年10月の発足から2年間で、米国で人気の総合格闘技「UFC」、国際女子サッカークラブ選手権なども誘致してきた。