■「知る権利」に致命的な打撃
「秘密保護法案」に、多くの国民のみなさんから、不安と懸念の声があがっています。どう考えたらいいのか、お話ししたいと思います。
この法案は、外交や防衛などに関わる「特定秘密」を漏らした公務員などに、最高で懲役10年という厳罰を科すというものです。
◆大臣の一存で決められる「範囲」
「秘密の範囲」がきわめて曖昧で不明確なのが、この法案の特徴です。「特定秘密」は「防衛」「外交」「特定有害活動(いわゆるスパイ行為)の防止」「テロ活動防止」の4分野に「限定する」といいますが、例えば「防衛」では自衛隊の運用、装備などあらゆる項目が対象であり、とても「限定」などされてはいません。
とりわけ、「特定秘密」を指定する決定権が「行政機関の長」に委ねられていることは重大です。外務大臣・防衛大臣などが「わが国の安全保障にとって著しく支障を与える恐れがある」と判断すれば、「特定秘密」に認定できるのです。これでは、秘密は際限なく広がってしまいます。しかも、いったん秘密指定すれば、期間はいくらでも更新できるので、永久に公表されない恐れすらあります。
国民は、何を秘密にしたかも知らされません。ですから、自分が接した情報が「特定秘密」かどうかもわからないまま、処罰されることすらあり得るのです。
政府は「原発やTPPは秘密保護法の対象ではない」といいますが、法文上にはそれらが除外される保障など、どこにもありません。原発事故直後のデータ隠しのように、政府が国民に知らせたくない情報を「特定秘密」にしてしまう危険性もぬぐえません。
法案は、最高で懲役10年という重い刑罰で、公務員をはじめ幅広い国民に「秘密保持義務」を課しています。故意に漏らした者だけではなく、過失によるものも処罰対象です。