10月上旬にインドネシアとブルネイで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議から環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)までの一連の国際会議では、米中パワーのバランスに変化が見られた。オバマ大統領が国内問題に縛られて首脳外交に出席できず、逆に中国の習近平国家主席が出席して存在感を示し、アジアにおけるパワーシフトさえ予感させた。
冷戦後の国際秩序で主導的な地位を果たしてきた米国は、シリア・アサド政権の化学兵器使用に対して軍事制裁を唱えながら、中露の反対で実行できなかった事例なども、米国のパワー低下を印象づけている。
一連の首脳外交では、習主席は自由貿易協定(FTA)締結などASEANとの互恵協力の成果を誇示。しかも具体的にASEANとの貿易額を2020年までに2.5倍の1兆ドル(約100兆円)に拡大することを提案し、ASEANから中国に留学生1万5000人を招き、3~5年間の奨学金を提供する考えを申し出た。
また習主席は首脳外交と併せ、東南アジア各国を初めて公式訪問。ブルネイ、マレーシア、インドネシアを歴訪して微笑外交を展開した。マレーシアでは17年の貿易額を12年の560億ドルから1600億ドルに増やし、マレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道建設に中国企業の参入なども約束した。