診療報酬は税金のほか、企業や個人の保険料、患者の窓口負担で賄われるため、報酬を増やすとその分、国民負担が増える。このため、バブル崩壊後の景気低迷や高齢化の進展を背景にマイナス改定が増えた。特に2000年代前半の小泉純一郎政権下では大幅なマイナス改定が続き、医療現場の崩壊が問題視された。それが09年の政権交代を機に、民主党政権では2回連続でプラス改定となり、ようやく明るさが戻った矢先だけに今回の改定の行方が注目されていた。
田村憲久厚生労働相が中心となって自民党の医療関係議員も巻き込みマイナス改定を迫る財務省を土壇場で押し戻したといわれるが、0.1%の引き上げでは力足らずの感は否めない。しかも「0.1%の中には、4月からの消費税率引き上げ分の1.36%も含まれており、実質的にはマイナス1.26%となる。むしろ財務省に押し切られたのかもしれない」(元財務副大臣)と言っていい。
ただし、14年度予算から都道府県単位で地域ニーズをくみ上げ、病院機能を集約や転換、連携に必要な費用を直接、補助金として出す「基金制度」が創設されたことは救いといえよう。来年度予算で約900億円が配分されている。
財政再建と経済成長を両立させなければならないアベノミクスは容易なことではないが、いずれも国民生活のためにあることに変わりはない。使うべきお金と削るべきお金の見極めを誤ることは許されない。(ジャーナリスト 森岡英樹)