【ジャカルタレター】汚職摘発で国民の認識に変化

2014.1.8 05:00

 インドネシアで、昨年もっとも社会をにぎわせた問題は、汚職による逮捕や疑惑といっても過言ではない。

 スハルト政権時代は、汚職や縁故主義が横行し、汚職は文化だといわれるほど、どの層にも汚職が蔓延(まんえん)していた。ユドヨノ大統領は、2004年の初の直接選挙で大統領に就任してから、また、09年の総選挙で第一党に躍進した民主党も、汚職撲滅を前面に出し議席を勝ち取ってきた。インドネシア国民にとって汚職は深刻な問題だ。ユドヨノ大統領は、汚職大国の汚名を返上するため、政府の独立組織である「汚職撲滅委員会」の権限を強めるなどして汚職撲滅を積極的に進めてきた。

 ◆党幹部、大統領側近…

 汚職撲滅委員会の努力のおかげか、汚職そのものが増えているからか定かではないが、昨年は、政権を揺るがし、国民の信頼を失うような汚職事件が次々と明らかになった。たとえば、大統領が最高顧問を務める政権与党である民主党の党幹部や大統領の側近が相次いで逮捕。党首が辞任し、さらには大統領の次男にも汚職疑惑が飛び火した。党の設立時から、クリーンなイメージで国民の信頼を勝ち取ってきたイスラム政党である公正福祉党の党首も逮捕されるなど、数多くの政治家が汚職事件によって摘発された。

 また、警察の幹部、憲法裁判所長官、石油と天然ガスの生産開発の許認可を与える権限を持つ政府機関の長官も汚職の容疑で逮捕された。地方分権が行われているインドネシアでは、それぞれの地域で政治家による汚職事件が後を絶たない。町議会議員、市議会議員、県議会議員に至っては、数えきれないほどの逮捕者がでた。多くの国民から、信頼できるのは、汚職撲滅委員会だけといわれているほどである。

 ◆新しいリーダー像

 その汚職撲滅委員会に対する嫌がらせも増えている。汚職疑惑がかけられている人にとっては、この委員会の存在が目障りで仕方ないのだ。非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナルの調査によると、インドネシアにおける腐敗した組織は順番に、(1)立法府(2)警察、(3)司法府-とのことである。ある人権活動家は、インドネシアの問題は一に汚職、二に汚職、三に汚職であると答えている。

 いまだに汚職が蔓延しているインドネシアであるが、これだけ数多くの汚職による逮捕者が出たことで、国民の多くは「汚職はいけない」という認識が形成されつつあるようだ。

 今年は選挙の年である。大統領選挙や総選挙も控えている中で、クリーンなイメージの新しいタイプの政治家が求められている。大国インドネシアのかじ取りをするリーダーには、ぜひ世界標準の汚職に対する認識を持ち、お金や縁故主義による決定ではなく、明確なルールによるスムーズな行政執行の実現に取り組んでほしい。

 (堀場明子・Serendipity Japan)

 「ASEAN経済通信」http://www.fng-net.co.jp/asean_top

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