「欧州や米国経済に対して強気ですが、新興国には慎重な見方です」。米保険大手、プルデンシャル・フィナンシャルが7日、2014年の経済・市場見通しを発表した。同説明会に臨んだマクロ、株式、債券などアナリストの面々はおおむね強気の相場観だったが、リスクの上位に新興国を掲げた。
国別でみたリスクの筆頭格はタイ、インドネシア、トルコ。インフレ圧力に外貨流出という新興国特有の経済危機モードに入ったのに加えて、反政府デモや汚職問題が投資家心理を冷やしている。
転機は昨年5月だった。シリアでの政情悪化やイラン・イスラエルの対立といった地政学リスクの高まりが、民主化運動で揺れていたトルコの金融市場に波及した。トルコ売りは経常赤字国の東南アジア、南米諸国に広がり、新興国の株価動向を示すMSCI新興国指数は、1年前から約1割低い水準まで下げている。米国株が同時期に3割超も上げたのにだ。
「今年は1994年の再来は起きるのか」。最近は、こんなことも投資家の間でささやかれるようになった。
94年当時は足元と同様に金利曲線が平坦(へいたん)で、長短金利差が小さかった。このため、運用難にある米国などの投資家が高利回りを求めて、レバレッジをかけて新興国の債券を積極的に購入した。
連邦準備制度理事会(FRB)が金融を引き締めるとマネーの流れが反転する。ウォール街の投資家が新興国から一斉に資金を引き揚げ始めた。94年の新興国危機は「テキーラ・ショック」と呼ばれ、メキシコの通貨が急落して新興国から資金が流失した。
当時は混乱が米国内に逆流した。複雑な金融派生商品を組み合わせることで金利の低位安定に賭けていた米カリフォルニア州オレンジ郡が巨額損失を抱えて破綻。地方債市場が混乱し、同利回りが急上昇した。米日用品大手のプロクター・アンド・ギャンブルも似たような取引で損失を計上している。