タイの反政府デモは、デモ隊がバンコク中心部の主要地点を占拠するなど、緊迫の度を増している。デモ隊は要求が受け入れられない場合、空港占拠も計画しており、タイ経済への影響は今後、さらに拡大しそうだ。こうした状況に日本企業の間ではタイを補完する形を含め、事業所の周辺国への移転や進出を検討するタイ・プラス・ワンの動きが活発化している。ただ、これら周辺国も賃上げ要求をめぐるデモが発生するなど、それぞれリスクを抱えている。
今月初め、カンボジアの首都プノンペンで服飾工場の労働者らが、最低賃金の引き上げを求めてストライキを行ったのに対し、取り締まりにあたった治安部隊が発砲、労働者ら4人が死亡した。カンボジア政府はデモやストライキ自体が違法であり、責任は労働者側にあると主張。さらに今回のデモは野党勢力が後押しした可能性があるとして、最大野党カンボジア救国党のサム・レンシー党首らを召喚した。サム・レンシー党首は、昨年の選挙で敗れながら、選挙に不正があったとして議会をボイコットしている。フン・セン政権はサム・レンシー氏に対し、「外国勢力に頼って政権奪取を狙っている」(カンボジア外交筋)との厳しい見方をしており、今後こうしたストやデモに対する取り締まりに加え、野党勢力への圧力を一段と強めるものとみられる。
◆韓国の要請に批判
一方、今回の騒動でカンボジア政府以上に批判を集めたのが韓国政府だ。駐カンボジアの韓国大使館が、カンボジア側にストの取り締まりを働きかけていたと発表したためだ。
米ニュースサイト、グローバルポストによると、韓国大使館は交流サイト「フェイスブック」の公式ページでカンボジア政府に対して、韓国からの投資の重要性を指摘し、治安部隊による断固たる取り締まりを求めたことを明らかにした。その結果、韓国資本の工場にだけ治安部隊が派遣されたとし、韓国の労働者を守るためにベストを尽くしたと強調してみせた。