【ビジネスアイコラム】
4月中旬、現地の政府系研究機関である中華経済研究院の招きで台湾を訪れた。学生による立法院(国会)占拠事件が終わってまもなく、台北では余熱が冷めやらない様子だった。ただ、今回はその話ではない。
台北滞在中に、台湾出身で唯一のノーベル賞受賞者(1986年化学賞)である李遠哲博士に長時間話を聞く機会があった。李氏は「科学者の国連」と称される国際科学会議の議長で、77歳の現在も世界を飛び回る多忙な日々を送っている。台湾のみならず、華人社会で広く尊敬を集める人物だ。
当方の関心は、中国の科学技術力を李氏がどう評価しているかにあった。人口13億の中国は人材が豊富。同時に、政府が必要とみなす研究には議会の掣肘(せいちゅう)を気にせず、潤沢に予算を投下できる。中国は急速に科学技術大国になっていくのではないか。
「技術面ではキャッチアップが進んでいる。だが、基礎研究ではまだ日本には及ばない」というのが李氏の答え。だが、今後の成長スピードは速いのでは?