【飛び立つミャンマー】高橋昭雄東大教授の農村見聞録(15) (1/3ページ)

2014.5.9 05:00

パヤー(寺院)の周辺に並ぶカドーブェ店。恰幅のよい麦わら帽子の男性やカメラの方を向いている女性は店主たちで、マ・トゥー・ス・チェーのメンバーである(高橋昭雄氏撮影)

パヤー(寺院)の周辺に並ぶカドーブェ店。恰幅のよい麦わら帽子の男性やカメラの方を向いている女性は店主たちで、マ・トゥー・ス・チェーのメンバーである(高橋昭雄氏撮影)【拡大】

 ■門前町の繁栄で発生した金融講

 日本では鎌倉時代にはあったという頼母子(たのもし)講あるいは無尽講は、経済学では回転型貯蓄信用講(Rotating Savings and Credit Association, ROSCA)と呼ばれ、一定の期日に構成員が掛け金を出し、くじや入札で決めた当選者に一定の金額を給付し、全構成員に行き渡ったとき解散するという互助的金融組織を意味する。当節の農村開発やコミュニティースタディで注目されている分野の一つである。その理由は、制度金融が発展していない途上国で、この講が庶民の互助組織として、貧困削減や家内工業振興に役立つと考えられているからである。

 ◆商店主らが掛け金

 昨今のミャンマーでも、国連開発計画(UNDP)やさまざまな非政府組織(NGO)の活動によってこうしたタイプの金融講が急増している。しかし、外部からの働き掛けによらない自生的な講は、町の市場商人やサイッカー(自転車タクシー)業者間で時たま見かける程度で、私の経験では農村部で実見することはなかった。ところが、農村で金融講が発生する過程をたまたま見聞することができた。今回の事例もあのティンダウンジー村である。

 ミャンマー語でROSCAは「ス(集める)・チェーグェー(金銭)・アプェ(組・講)」という。村で最初にこれができたのは2009年で、その組織者は当時27歳のマ・トゥーという名の若妻だった。彼女にちなんで、この講はマ・トゥー・ス・チェーと呼ばれる。メンバーは16人で、全員がガドーブェ店や食堂の経営者であり、農民や農業労働者は1人もいない。毎日1万チャット(約1060円)の掛け金を支払わなければならないので、日銭の入らない農民や、そもそも1日3000チャットほどしか稼げない農業労働者は加入したくてもできない。

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