■日本主導で軽減策提案を
東西冷戦の終焉(しゅうえん)で人々はグローバリズムが定着し、主要国の協調による平和と市場主導の経済成長が実現すると期待したが、21世紀に入ると、期待に反してグローバル・リスクが高まっている。
◆米国の求心力低下
第1に、ガバナンス・リスクが高まっている。グローバリゼーションの進展で、国力が平準化し、世界構造が多極化した。これまで世界秩序の基軸国であった米国がその求心力を低下させ、ロシア、中国、インドなどが発言権を伸ばした。国際連合の安全保障理事会では、欧米とロシア、中国が対立し、シリア、イラン、イスラム国、ウクライナなどの紛争に効果的な対応ができない。
国際経済運営では従来はG8が主導してきたが、中国、インドなどが加わって20カ国・地域(G20)となり、会合を開いても効果的な対策が合意できなくなっている。世界貿易機関(WTO)の新ラウンド交渉が失敗し、多くの国が自由貿易協定(FTA)を志向している。地球環境問題でも、京都議定書の後継の国際枠組みが予定されている2015年末までに合意できるか予断を許さない。
第2に、セキュリティー・リスクが高まっている。地域紛争や民族対立が後を絶たず、とくにイスラム諸国内で激しい内戦が続いている。イスラエルとパレスチナの対立にも解決のめどが立たない。少数民族の反発も広がっている。核拡散防止が実行できず、テロの脅威が拡散している。一部で国境や資源確保をめぐる対立が続いている。
第3に、市場リスクが高まっている。米国を中心に主要国が経済拡大政策をとり、過剰流動性が世界にばらまかれ、金融、石油、証券、商品などの市場に投機の危険が拡散している。