タイのワチラロンコン皇太子(右)とシーラット皇太子妃(左)(AP)【拡大】
≪寄稿≫
□パヴィン・チャチャワーンポンパン京大東南アジア研究所准教授
タイのクーデターから6カ月余りが過ぎた。現在の政治状況について、元タイ外交官のパヴィン・チャチャワーンポンパン京都大学東南アジア研究所准教授が本紙に寄稿した。
◆軍政主導で憲法起草
5月22日のクーデターから6カ月余りが経過した今、タイの政局は落ち着いているようにみえる。戒厳令は続いているものの、かつての日常に戻ったかのようだ。
軍事政権を率いるプラユット暫定首相は連日、タイ国民との意思疎通を図っている。国民に忍耐と政府への信任を訴える一方で、反対勢力を抑えるために厳しい統治を行っている。少しでも軍政批判をする者は徹底的に追及するよう警察に命じた。抵抗のサインとして3本の指を掲げる者やサンドイッチを食べる学生、さらに反政府のチラシを配る活動家は、皆逮捕され、拘留された。
学者やメディアも威嚇され、政治家は自らの見解を明らかにすることを禁じられた。インラック前首相は、旅行する自由を謳歌(おうか)したいのなら「黙る」ように命じられたと証言した。
こうしたなか、プラユット首相は軍の“政治における陣地”を確実なものとするために憲法を作ろうとしている。憲法起草委員会のメンバーは軍政によって指名され、政治改革委員会は反タクシン派であふれ、閣僚は国軍と王室エリートばかりだ。
軍政は地方レベルでの選挙は当面、行われないと発表した。国家人権委員会や国家汚職防止委員会は軍の利益を守るために機能し、国軍の政敵とくにタクシン元首相派の人間をふるい落とそうとしている。
もはや首相でもないインラック氏がいまだに「コメ担保融資制度」をめぐる問題で調査対象となっているのは、調査が続いている限り、インラック氏は次の選挙には出られないからだ。