【高論卓説】物語が生む外国観光客の「コト消費」 田部康喜 (1/2ページ)

2015.1.9 05:00

 東京・新宿のビル街に囲まれた花園神社は、週明けの仕事始めのサラリーパーソンが参拝の長い列を作っていた。列のなかから聞こえる言葉に耳をすませると、アジアからの外国人観光客に気づく。

 神社の本殿の空を切り取ったようにして、今春に開業する30階建てのホテルがそびえ立つ。そんなビル群のカゲに隠れるような路地裏にその食堂はある。いや、そういう設定になっている。主人公は自己紹介する。

 「営業時間は夜12時から朝7時まで。人は『深夜食堂』って言ってるよ。客が来るかって? それがけっこう来るんだよ」

 漫画家の安倍夜郎氏がコミック雑誌に連載中の「深夜食堂」は、単行本も刊行され、中国や台湾、韓国でも読まれている。韓国ではミュージカルにもなった。

 経歴が一切わからないマスターが経営する店は、客が注文するとたいがいな料理は作ってくれる。赤いウィンナーやきのうのカレー、ポテトサラダ……店にやってくる人々は、ひとつの家族のように触れ合いながら、料理を食べる。

 読者のファンが広がっている国々では、こうした料理のレシピ本も刊行されている。さらには、観光のついでに、日本の路地裏の店で実際に食べてみようという静かなブームも起きている。

 経済成長によって豊かな生活を手に入れてしまったとき、人々はさらに何を得ようとするのか。「モノ消費」から「コト消費」の時代になろうとしているといわれる。「コト消費」の定義はさまざまだが、旅行や観劇、音楽会など、人々を満足させる出来事の理由つまり物語が必要である、ということのようである。

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