マイナンバー(社会保障・税番号)制度の導入まで1年を切った。10月には個人に「個人番号」の通知、法人には「法人番号」の通知・公表が行われ、来年1月からはマイナンバーの利用と「個人番号カード」の発行が始まる。しかし、マイナンバーへの国民の関心が高まっているとは言い難い。2002年8月に猛烈な反対運動の末に住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)が運用され、住基番号も通知されたが、国民生活に特段の変化はなかったとの実感があるからだろう。
私は運転免許証を保持していないので、03年から交付された顔写真付きの住基カードを身分証明書として利用してきたが、有効発行枚数は約666万枚で普及率はわずか5%。この住基カードのICチップにオンラインで本人確認を行う公的個人認証サービスの電子証明書データを入れて、いくつかの電子政府・電子自治体サービスを利用した経験もある。しかし、どれも使いにくく、頻繁にサービスを利用する企業や税理士などを除けば、個人に普及しないだろうと感じた。
事実、パスポートの電子申請は09年に停止。公的個人認証を使う所得税などの電子申告は現在は年間1000万件近くに達しているが、電子証明書の発行数は100万件程度なので大半は税理士が代行しているのが実態だ。
結果として心配された住基ネットを含めた電子政府・電子自治体サービスのトラブルはほとんど起こらず、国民も利便性向上などのメリットを受けないまま。今回、マイナンバー制度の導入がすんなり決まり、国民の関心が低いのも当然ではある。ほぼ同時期にスタートしたお隣り韓国の電子政府が世界トップクラスと高く評価され、IT産業も大きく成長を遂げたのとは対照的だ。