政府は31日、グローバル企業が本国と子会社のある双方の国から課税される問題が起きた際、税務当局間の相互協議によって原則2年で解決する制度を導入する方針を固めた。2年以上かかれば、独立した仲裁人が裁定する。国際課税紛争を早期解決する態勢を整備し、多国籍企業の負担を軽減する。
国際税務紛争の早期解決策は、経済協力開発機構(OECD)が9月末までにまとめる国際ルールの一つ。各国同士で結ぶ租税条約に新たな規定として盛り込む。
国税庁によると、日本と他国との間で発生した二重課税などの税務紛争を解決するための協議は、平成25年度は平均22.6カ月、OECD非加盟国とでは40カ月の期間がかかった。長くなれば、企業に納め過ぎた税金が還るのが遅くなり、事業戦略に支障をきたす。協議が合意に至らず、企業が泣き寝入りするケースも出ている。
新ルールは、協議が2年を超えれば、仲裁手続きに入る。両国が該当事項に関わっていない仲裁人をそれぞれ選任の上、両者がさらに独立した仲裁人を選んで計3人が紛争を決着させる。各国にとって課税主権を他国に委ねることは受け入れにくいことでもあり、協議を迅速に解決するインセンティブにする。
先進国は協議の長期化を放置すれば、企業の国際課税への信頼感の欠如につながるとみており、G7(先進7カ国)を中心とした有志連合をつくって新ルールに対応し、早期の紛争解決に道筋をつける。一方、新興国からは仲裁を介入だとして反発が出ている。