東日本大震災から4年8カ月。風評被害の払拭に向け福島県が進める食の安心・安全への取り組みと草の根的な復興プロジェクトが効果をみせ始めている。コメを通して県が全力で挑む消費者への安全理解の促進策の現状と課題は-。
■買わない人も買えない人もいる現実
「3.11以降、九州・沖縄産のコメが売れるようになった。味は福島のコメの方がいいが、いまだに放射線汚染を不安に思う消費者は少なくない」
都内にある精米店の店主はこう明かす。この店主は、消費者においしいコメを食べてもらいたいと、昔から福島産のコメを推奨してきたという。しかし、震災がコメの消費行動を変えてしまった。事故を起こした福島第一原発から遠ければ遠いほど安全だと思う人たちが増え、福島産のコメを敬遠するようになったのだ。風評など意に介さず、おいしい福島産を求める消費者もいるが、店頭では簡単に買えないというケースもある。「売れないコメは置くわけにはいかない」からだ。
福島県で生産されたコメは、生産者や集荷業者(JA)から検査場に全量持ち込まれ、スクリーニング検査が実施されており、これに合格したコメだけが出荷される仕組みになっている。生産されたコメは、出荷米だけでなく、農家の自家飯米、知人などへ送る縁故米も含め、コメの放射性物質を全量全袋検査しているのだが、この取り組みが消費者まで十分に届いていないのが実情だ。