■主要論点で平行線 反対論も強まる
欧州連合(EU)と米国による環大西洋貿易投資協定(TTIP)の交渉の行方に暗雲が立ち込めてきた。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)と並ぶ大型の自由貿易協定(FTA)だが、米欧間の溝は大きく、交渉は大幅に遅れ、米欧ともに反対論が一段と強まっているためだ。EUは推進派のオバマ米大統領在任中の妥結を諦めていないが、予断できない状況となっている。
◆消費者軽視に反発
「議論に火をつけるのが目的だ。欧州委員会は『悪かった。過ちを犯した』と認めるのが最善だ」。環境保護団体のグリーンピースは今月2日、TTIP交渉に関わる内部文書を暴露した上、ベルリンでの記者会見で、こう強調した。
文書は約250ページ。機密扱いだけに波紋が広がった。グリーンピースは、有害な可能性がある製品を予防的に規制できるEUの措置の緩和を米側が求めているなどとし、TTIPは大企業の利益のために欧州の消費者の安全や環境を犠牲にするものと主張。交渉中止を求めた。
これに対し、欧州委側はあくまでも交渉過程における双方の立場を示すものであり、EU側交渉担当責任者はグリーンピースの主張の一部は「全くの間違い」と反論。米側も「誤解を招く解釈だ」とし、米欧当局が沈静化に躍起となった。
TTIPは大西洋を挟み世界の国内総生産(GDP)の約半分、貿易額で約3分の1を占める巨大経済圏の創出を目指すもの。実現すれば、EUと米国のGDPはそれぞれ0.5%、0.4%増加すると見込む。
ただ、2013年に始まった交渉は、昨年末に大筋合意に達したTPPに比べ遅れている。米側がTPPの交渉を優先したためとの見方もあるが、主要な論点で米欧の主張が平行線をたどっていることが大きな要因だ。