日銀が新枠組み決定で構造改革どこまで 月内にも諮問会議 重要性確認へ

  • 記者会見で記者の質問を受ける日銀の黒田東彦総裁=9月21日午後、日銀(宮川浩和撮影)

 日銀が長短金利を目標とする新たな金融政策の枠組み導入を決めたことを受け、政府は日本経済の構造改革を加速する。月内にも開く経済財政諮問会議では、日銀から決定に関する報告を受け、政府の働き方改革などによる生産性向上の重要性を確認する方向だ。日銀と歩調を合わせる形で、経済の拡大につながる抜本的な改革案をどこまでスピーディーに打ち出せるかが政府の課題となる。(山口暢彦)

 「経済成長を実現してデフレから脱却するのは政府・日銀の共通目標だ。すべての政策を総動員し、アクセルを吹かす」

 23日の記者会見で石原伸晃経済再生担当相はこう述べた。政府からは、日銀の決定に対し「2%の物価安定目標を早期に実現させるもの」(安倍晋三首相)などと歓迎の声が上がる。

 ただ、人口減を背景に低迷する日本の潜在成長率を高めるには、企業の投資拡大や生産力強化を促す、規制改革や成長戦略などの環境整備が必須だ。

 この点について政府は経済財政諮問会議のほか、9月に新設した「働き方改革実現会議」や「未来投資会議」「規制改革推進会議」などで、規制緩和や成長戦略の具体化に向けた検討を進める方針。早期に法制化へつなげる構えだ。

 ただ、問題はこうした政府の改革案が、どこまで実際の設備投資や個人消費につながるかだ。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの中田一良主任研究員は「構造改革はこれまでも議論されてきたが、日本経済の成長期待を高めるほど徹底したものでなかった」と分析する。

 実際、解雇の金銭解決導入や脱時間給制度の導入、農業への民間企業参入の本格化など、労働分野や農業分野の規制改革は何度も必要性が指摘されてきた。だが、既得権益層の抵抗などもあり、抜本的な改革は先送りされてきた。政府の改革姿勢が中途半端だと見透かされれば、企業や家計への影響は期待できない。

 金融政策の限界が指摘される中で知恵を絞る日銀に対し、政府も徹底した改革推進が不可欠だ。