円高と日銀の新政策移行 マイナス金利拡大を躊躇するな (1/4ページ)


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【日曜経済講座】

 日本経済の最大の懸案は円高の阻止なのだが、日銀が「長短金利操作付き異次元金融緩和」政策を打ち出しても、円高基調はむしろ強くなった。何かが足りないのだ。

 グラフは日銀の異次元金融緩和政策の柱になってきた金融の量的拡大を表す日銀資金供給残高と円相場と実質金利の動向である。量的拡大は経済学説上では円安要因なのだが、もはや通用しない。

 円高に並行するのは、日本の実質金利の上昇および日米間の実質金利差逆転である。米国の実質金利が日本よりも低い。外為市場では実質金利が高い通貨が買われ、低い通貨が売られるのだ。日銀は今年2月にマイナス金利政策に踏み切ったが、実質金利は下がらない。さらに日銀は9月21日、政策の比重を量から金利へと移行させたのだが、円の対ドル相場は100円を切りかねないありさまだ。

 日本に限らず通貨高こそは主要国が最も警戒する。11月の米大統領選でクリントン民主党候補を支援するオバマ政権は、日本、中国、韓国、台湾、ドイツの5カ国・地域を外国為替操作の監視対象とし、厳しくチェックしている。トランプ共和党候補は負けじとばかり、中国などの通貨安が米国の雇用機会を奪っていると激しく非難する。

自動車、電子機器など各国の産業競争力は拮抗している