【視点】アパート建設の過熱に潜む罠 住宅市場の歪みに目を背けるな (1/4ページ)

 □産経新聞論説委員・井伊重之

 人口減少で需要が減少するはずのアパートの建設が急増する異変が起きている。一昨年の相続税増税に伴い、節税策として建設業者が地主らにアパート経営を持ちかけているためだ。長期の家賃保証をうたい、銀行から融資を受ける手伝いもするなど、あの手この手でアパート建設を提案している。だが、少子高齢化を背景に全国規模で空き家が急増する中で、郊外にアパートを建設しても経営が長期に成り立つとは思えない。事業としてのリスクを冷静に見極めたい。

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 東京郊外で農業を営むAさん(70)は一昨年春、自宅近くの土地に2階建て総戸数8戸のアパートを建設した。大手の建設請負会社から熱心に建設を勧められたからだ。「このまま土地を遊ばせておくと、お子さんに相続税で負担がかかるといわれた」という。

 アパートを長期一括で借り上げるサブリース(転貸)という手法を提案した営業マンは、向こう30年の家賃を保証し、地元銀行から融資を受ける手続きもほぼ代行してくれた。「契約の際には都内の本社ビルに呼ばれ、大きな会議室で役員と契約書を取り交わした。その後、ホテルで昼食もごちそうになった」とうれしそうに語る。

アパートを建てると、相続した土地の評価額が下がり、相続税が安くなる